素敵な患者さんとの交流がありました
先日嬉しかったことと、悲しかったことが同時にあったので、このことを忘れない様に手紙にして書き留めておきました。今回はそのことを書きます。
その患者さんは、もう10年位月に1度クリーニングに通ってくださっている方でした。
うけつけでいつもの様に「こんにちは」とあいさつすると「4〜5分程お話をしたいので時間をいただいていいですか?」との事でした。
なんだろ?
何か私達が気づかない点があったのかなぁ?
この前お待ち時間が長かったことかなぁ?
それなら謝らないと・・・
などと考えながら「ここでおうかがいしますよ」と受け付けでお話を聞く事にしました。
その方は88才のおじいちゃんで以前脳梗塞になられたことがあられるのですが、とても笑顔が素敵で現役時代は中学校で教壇に立ってらっしゃったそうです。私達が「こうした方がもっとよくみがけますよ」というアドバイスもよく耳を傾けて下さっていました。
そんな大切な患者さん(以下Mさんと記します)が、
「ぼくね、急な話ですけど8月から娘の所へ行く事にしたんですよ」
「本当は玉名にずっといたいんですけどね」
「娘さんの所ってどこなんですか?」
「近いの?遠いの?」と聞くと
すこしのあいだ間があって「神戸なんです」とぽつり。
えー遠すぎる!
これからどうやって88才のMさんが神戸のコミュニティーにとけこんでいくんだろう。
メンテナンスのつづきを心よくひき受けて下さる所あるのかしら?などと考えながら
「それはさびしくなりますが、神戸は異人館や大きな美術館や博物館、オシャレな所もたくさんあるからしっかり楽しむといいですよ」
「隣の大阪~京都はお笑いや落語の寄席もたくさんあるからたくさん楽しみをもって暮らされてくださいね」
「大阪は食い倒れの街と言われている位だからおいしいものもたくさんあるから何でも食べて、ずっと元気でいてくださいね」ときっと引っ越した先の不安が尽きないだろうから、楽しみを持たせないといけないと思い、関西の良い所を知っているだけ話しました。
「それでは当院での治療は最後になるのですね。スタッフにもごあいさつさせますので、しばらくお待ちください」と待合で話を終わらせ、診療室ではついたスタッフには今日が最後になる事、ひきつぎの紹介状は必要か確認して必要なら準備をお願いしました。
いつもの処置が終わり、
「院長」と呼ばれたのであいさつに行くと、Mさんは
「ぼくはね、今年88才になったので玉名市長から何か希望はありませんか?と尋ねられたので、日本一おいしいと言われている新潟のこしひかりをお願いしました。とてもおいしかったです」とおっしゃいました。
「それは良かったですね。こんな日本一やさしい市から出ていくのはさぞかし悲しいんでしょう」と私が言いましたところ
「ええ。ぼくはなんでも日本一が好きでしてね」
「みかんもいろいろな産地があるけど、河内のみかんが日本一おいしいから河内みかんしか食べないんですよ」
「あとお茶は八女のお茶が日本一だと思うからそれしかいただきません」
「牛もあか牛をいただくんですよ。とにかく日本一が好きなんですよね」
日本一か・・・私も一番が大好きだわ。
富士山とか阿蘇山、琵琶かとか・・・などとボーッと考えていると
「ぼくはかい歯科もね技術も立地もばっちりで日本一だと思うんですよ」
「いいえ思うんじゃなくてそう感じるんですよ」
「周りはビルに囲まれてなくて、よい空気と緑に囲まれて、先生もだけどスタッフの皆様もいい人ばっかりで、施設も整っていて、本当に日本一だと考えています」
「ぼくは本当はここから離れたくなんですよ・・・」
「でももうどうしようもないからですね」
「そんなに言ってもらって光栄です。嬉しいです。ありがとうございます。」
「ただ、もういらっしゃれなくなられるのがさびしいです」
さすが元先生だわ!!
私今とてもほめてもらえたんだわ。このことを忘れずこれからに生かすのよ。
忘れないうちに書いてこれからもスタッフと頑張ろう。
と思い書き留めたのがこの文章です。
Mさんも88歳にして、新しい環境での生活をスタートされます。
どこに居ても、どんな環境でも、健康であれば生活は充実すると思います。
充実した生活を支えるため、当院は生きているかぎり、ギリギリまで自分で食べれるように患者さんのお口の中をお守りしています。
お1人お1人の人生は違いますが、自分が自分の食べたいものを食べていけることは幸せなことです。
これはどの人にも当てはまることです。
いつも患者さんの人生のはしっこに私たちがいれたら幸せなことだと思い、この手紙を紹介させていただきました。
長い文章ですが、最後までお読みいただきありがとうございました。